武田邦彦 対 NATROM
武田邦彦が滅茶苦茶なことを言っているというのがネットで話題になっている。たとえば池田信夫が批判している。
→ http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51746604.html
これに関連して、次のツイートがあった。
「喫煙者が3000万人で肺癌で死ぬ人が年間5万人だから、タバコを吸って肺癌になるのは600人に1人」。武田氏の頭の鈍さはこれに象徴されてると思う。
興味深いので、出典を調べたら、次の二つが見つかった。
→ http://paddington.blog.shinobi.jp/Entry/564/
→ http://d.hatena.ne.jp/NATROM/00110510
どちらも武田邦彦を批判している。
特に、NATROM 氏は、次のように述べている。
仮に、「喫煙者で肺がんになる人の割合は年間600分の1」であるのに対し、非喫煙者の群で年間6000分の1であったのなら、「喫煙すると肺がんになる可能性が高くなる」という表現は妥当であると私は考える。これは、疫学的な比較法を示したもので、その点では妥当である。(年間値を指摘した点も妥当である。)
しかし、武田邦彦のデタラメさの核心を示していない。その点では、もう一つのブログと同様だ。いずれにせよ、根本的な発想のレベルは、武田邦彦と同じようなものだろう。
──
そこでまともに説明しておこう。
「タバコを吸って肺癌になるのは600人に1人」
そもそもこんなに甘い数字が狂っている。これを前提とした上で「非喫煙者の群で年間6000分の1」なんてものを導入しても、
「偽 ならば 偽」
という命題と同様で、意味がない。間違ってはいないが、意味がない。(無意味命題。)
「タバコを吸って肺癌になるのは600人に1人」
という武田邦彦の主張そのものが根本的に狂っている。この根本を否定しなくては駄目だ。
では、正しくは? 下記に示そう。
──
最新の値は平成20年らしいので、その数値を取る。
死亡者数 …… 1143000人 ( → 出典 )
死因別では ( → 出典 )
・ 癌 …… 342963人
・ 呼吸器癌 …… 66849人 (呼吸器 = 気管・気管支・肺)
その内訳
男性 …… 48610人
女性 …… 18239人
この数値から言えるのは、こうだ。
「全死亡者数 1143000人 のうち、66849人が呼吸器癌で死ぬ。その率は 6%」
これは男女通しての値だから、男性だけを見れば、
48610÷(1143000÷2)= 0.085
となり、8.5 % となる。
このあとで、喫煙者と非喫煙者を区別する。その推定値は、いい加減に推定して、
喫煙者 …… 12%
非喫煙者 … 1%
というふうに推定することもできる。(いくらかのズレはご容赦)
こうして得られた数値が、真の数値だ。
「肺癌になるのは、喫煙者は 600人に1人で、非喫煙者は 6000人に1人」というふうな、そんな甘い数値じゃない。それは肺癌というものを見くびった数値だ。
喫煙者においては、肺癌で死ぬ可能性は、 12% ぐらいある。さらに言えば、喫煙にともなって、他の内臓疾患(癌や糖尿病を含む)にかかって死ぬ率も、8%ぐらいはありそうだ。
結局、喫煙が原因で死ぬ可能性は 20%ぐらいある。喫煙はそれほどにも危険な死亡因子なのだ。
「肺癌になる喫煙者は 600人に1人」なんてのは、池田信夫が言う「放射線が年 200mSv でも安全だよ」というのと同様で、過剰に甘く見た数値だ。そこにペテンがある。そのペテンを指摘しなくては、武田邦彦を批判したことにはならない。
[ 付記 ]
私の予想:
上記の見解に対しては、NATROM 氏が「間違いだ、トンデモだ」と批判するだろう。なぜか? 前項のコメント欄における悪口を見れば、そう推察できる。どうせまた「こいつの書くのはみんな間違いだ」と述べるだろう。(たぶん重箱の隅を見つける。)
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